LAW・朗・牢ブログ

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相続登記の義務化について

 改正不動産登記法が本年4月1日から施行され、相続の開始があったときから原則3年以内に相続登記の申請をすることが義務化されました。

 

 従来は、親族が亡くなっても、相続税の課税対象(3000万円+法定相続人の数×600万円の基礎控除あり)にならない場合、被相続人(亡くなった親族)名義で固定資産税さえ払っていれば、特にペナルティーはありませんでしたが、今後は相続登記を放置すると過料のペナルティーがあります。

 法律の改正自体は令和3年に行われており、現に相続登記の申請が相いで、法務局(登記所)はパンク状態のようです。

 相続人が配偶者と子の場合など、相続人が少なくて相続人間の交流も親密な場合、相続登記にそれほど支障はありません。しかし、相続人が多数いて相続人間の交流が疎遠な場合や被相続人が亡くなったのが数十年前で、その後にも親族が何人か亡くなっている場合には相続登記をするためには、以下のように様々な支障があります。相続登記手続のためには原則として相続人全員の実印が必要になるからです。

 

・相続人の範囲

 お子さんがいない方の場合、法定相続人が兄弟姉妹、甥、姪になることが珍しくありません。私にも子供がいない伯母がいますが、伯母の法定相続人は私を含めたいとこたちです。確か10人くらいいるはずですが、現時点で交流がなく連絡先がわからない人も多いです。

 さらに、何人かの親族が相次いで亡くなっている場合には、亡くなった順番によって相続人の範囲が変わってくる場合があります。相続人を確定するのも一般の方には困難なことが多いと思います。

・相続人間の温度差

 相続人がたくさんいる場合、各相続人の考え方も様々です。「忙しい、面倒くさい」と考える人、「別に遺産はいらない」と考える人、「もらえるなら、もらわないと損だ」と考える人などなど、このようなケースで全員の理解を得るのはなかなか難しいものです。

・遺産の価値

 遺産である土地建物が、都会の一等地にあるのなら売却して現金化も容易なので長らく放置されることは少ないです。しかし、地方都市の土地建物については、たとえ相続しても売却の目処が立たず、遺産分割への動機付けが難しい面もあります。

 

 このような場合に有効なのが、家庭裁判所の遺産分割調停を申し立てて、最終的には調停に代わる審判によって家庭裁判所に相続人を決めてもらう方法だと思います。この方法でもそれなりに時間と手間はかかりますが、それでもスムーズに行けば調停が始まってから数ヶ月の間に遺産分割が終了し、相続登記が完了すると思います。

 

 家庭裁判所の調停は、ご本人でも可能ですが、相続人の調査や相続人への連絡などスムーズに進めるには専門家に依頼する方がベターです。当事務所は、昭和の時代に被相続人が亡くなっている事例や相続人の数が10名以上の事例など困難な事例の経験もありますので、お気軽に当事務所あてご相談ください。

 

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嫡出制度の改正

 先の国会で嫡出制度に関する民法の規定が改正されました。

 嫡出子とは夫婦の間の子のことで、よく時代劇に出てくる「嫡男」というのは嫡出の男子のことです。これに対し非嫡出子というのはザックリいうと愛人の子、妾腹の子をいいます。

 婚姻中に生まれた子は嫡出子と推定されます。要するに妻が産んだ子は夫の子と推定されるということです。改正前は嫡出関係を否定することができるのは夫のみで、その期間も1年間に限られていました。妻が出産して2年ぐらい経ってから、「自分と全く似てないな。」と思っても、もう嫡出関係を否定することはできませんでした。

 豊臣秀頼は実は秀吉の子ではなく、淀殿と石田三成の子ではないかといわれることがありますが、秀吉は嫡出関係を否定できないのです。実際のところ昔はDNA検査など無かったので、夫が実は生物学上は自分の子でない子を嫡出子として養育している場合が数パーセントはあったのではないでしょうか。

 

 ところで、無戸籍児問題というのをご存じでしょうか。

 夫婦関係が破綻しているのに離婚が成立しない状態で、妻が別の男性Yと性的関係を持ち、子を出産した場合、その子は生物学的にはYの子ですが、嫡出推定により夫のこと推定され、出生届を出すと戸籍上夫の子となっていました。そのため、妻としては戸籍上夫の子となってしまうのを避けるために出生届を出さずに放置してしまい、戸籍のない子が生じてしまうのです。今回の嫡出制度についての改正より一定の範囲で無戸籍児問題を解消することができるようになりました。すなわち、①嫡出関係を否定できるのは夫のみでしたが、妻や子からも嫡出関係を否定でき、②その期間も1年間から3年間となり、③妻が上記のYと婚姻した場合には、子はYの子と推定されるなどと民法が改正されたのです。この改正によって無戸籍児となってしまう場合が一定数減るものと思われます。法律の施行は令和6年(2024年)6月以降からですし、法律の条文は結構複雑ですので、もし夫の子ではない子を身ごもってしまった場合は、早めに弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。

 また、今回の改正で、親権者の懲戒権の規定が削除されるとともに、親権者は子の人格を尊重し、「体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」という条文(民法821条)が新設されました。子の虐待問題に対応した法改正となります。

 

 約半年ぶりのブログ更新です。来年はもう少し頻繁に更新したいと思います。よいお年をお迎えください。

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少子化対策?

 2021年の日本の出生数は、過去最少の81万人だったという。日本全国の出生数が札幌市の人口の半分以下ということだ。少子高齢化が言われてるが、効果的な対策がないままである。少子高齢化の原因はいろいろあると思うが、根本的には子供を産めるのが一定年齢の女性だけだということがあると思われる。

 将来、医療や科学の進歩で、男性も子供を出産できるようにならないものか?以下、私の妄想である。

 ips細胞というのがある。男性の細胞から子宮のips細胞を作れないのだろうか。これを男性の胃なり、大腸なりに移植して培養すると、男性の体にも子宮が作れるのではないか。その子宮に受精卵を着床させれば、胎児が育つのではないか。出産は帝王切開にならざるを得ないが、男性も妊娠、出産できるようになるのではないか?

 男性も妊娠、出産できることになれば、少子化問題の解決につながらないだろうか。また、男女差別やジェンダーの問題も男性が妊娠、出産できることになれば、根本的な価値観が変化するように思う。

 非現実的な話だが、100年後にはあり得ない話ではないような気もする。

 

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ヴァーチャル証人

 民事裁判のIT化の動きが速い。今年中には法律が成立する運びである。実際の運用までにはまだ時間がありそうだが、アナログ人間の私も、あと少なくとも10年くらいは弁護士の仕事をしていたいと思っているので、勉強しなければなるまい。

 ここから先は、私の妄想だが、いずれ裁判では「ヴァーチャル証人」が出現するのではないだろうか?いまでもコンピュータゲームなどでは芸能人にそっくりなヴァーチャルキャラクターが活躍している。技術的には、ある人の顔つき、表情、仕草、動き方、声、話し方の癖などを本人そっくりに取り込んで、その人の精巧なアバターをヴァーチャルの世界に作り出すことが可能なのだと思われる。

 また、すでにAI技術の進歩で将棋の世界ではAIにプロ棋士がかなわないところまで来ているのだから、AI技術を活用して、客観的証拠に矛盾することなく、かつ主尋問、反対尋問の数十手先を読み、自分の方に有利なストーリーで受け答えができるようなプログラミングも可能だと思われる。

 本人そっくりで、客観的証拠に矛盾せず、反対尋問の追求も上手にかわしながら、嘘がつけるバーチャル証人の完成である。

 そうすると、民事裁判のIT化によって、証人本人が出頭していると称しながら、実はバーチャル証人が証言をしているということも技術的には可能になるのではないだろうか?もちろんそのようなことはある種の詐欺で、法律がこれを許すとは思えないけれども、悪い人が本気になって裁判所を欺こうとしたときに、これを裁判所が見破るだけの技術があるのだろうか?

 さらにいうと、被害者保護などの名目で、本人ではなくバーチャル証人が証言することが一定の条件で認められることはあり得ないとまでいえないように思う。例えば性犯罪の被害者の証言などは現在でもビデオリンク式の証人尋問が認められるなど、証人の負担を軽減する措置がとられているが、これをすすめていけば、「被害者保護」「セカンドレイプを避ける」などの美名のもとに、刑事裁判の法廷でバーチャル被害者が証言することが認められることにはならないだろうか。

 AIやITは確かに技術的にはすごいのだろうけれど、生の証人が直接裁判所に来て、裁判官や当事者の前で宣誓の上で証言するという伝統は、長い時間を経て築かれてきた人類の知恵でもある。

 IT化、AI化で大切なものが失われることがないか少し心配である。

 

 

 

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裁判員 やる人 やらん人

 来年の4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられるのと関連して、裁判員の選任資格も18歳に引き下げられることになったと一部のマスコミが報道していた。北海道新聞の記事では「高校生困惑」などの見出しが躍っているが、困惑する必要は全くない。そもそも裁判員にあたる確率は年賀状の切手シートがあたる確率よりも間違いなく低いし、仮に裁判員にあたったとしても高校生は辞退が可能だからである。

 今回は裁判員選任の仕組みなどについて述べてみたい。

 裁判員法によると衆議院議員の選挙権を有する者に裁判員の資格があるが、欠格事由、就職禁止事由、辞退事由がある人が除かれることになる。

 欠格事由は前科だったり、心身の故障などである。

 就職禁止事由は、結構たくさんあって国会議員、法曹関係者、警察官などが就職禁止事由になっている。意外なところでは自衛官が含まれている。この点、幹部自衛官はともかくとして、一般の自衛官まで就職禁止事由になっているのは個人的には疑問である。また、私はもし裁判員にあたったら是非とも裁判員になりたいと思っているが、弁護士が就職禁止事由になっており、紛れ込もうにも、裁判所に顔が割れているし、「真与」なんて名前はなかなかいないので無理である。

 欠格事由、就職禁止事由は裁判員を「やりたくともやれない人」のくくりである。

 

 辞退事由は「やりたくなければやらなくてもいい人」のくくりであり、70歳以上の方、学生・生徒、過去一定期間内に裁判員にあたった人などのほかに下記の場合が辞退事由とされている。

①「介護または養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること」

 

②「その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること」

 

①②の解釈は玉虫色で、介護、育児、仕事なので忙しいし、裁判所まで行って裁判員をやるのは面倒だといった程度でも辞退が可能なように読める。要するに広く解釈するとほとんどの人が辞退事由があることになるし、狭く解釈するとほとんどの人があてはまらないことになる。実際の運用としては、①②の事情があるかどうかは自己申告で、調査されることもないので①②にあてはまるとして辞退することが可能である。実は裁判員になることは義務で、正当な理由なく裁判所に出頭しないと10万円以下の過料に処せられるのだが、過料に処せられた人は聞いたことがない。

 

 その結果、裁判員の辞退率は70パーセントくらいになっており、100人に出頭要請しても実際に裁判所に来るのは30人くらいとなっている。そして、裁判所に実際にやってくる人にはある種のバイアスがかかっていると思われる。要は真面目な人、時間に余裕のある人、意識の高い人が多く集まるのだ。私の経験では、裁判員にあたった後に結婚し、配偶者の仕事の都合で函館に転居したにもかかわらず、わざわざ札幌の裁判所までいらしたという真面目な方もいた。また、意識の高い人というのは、犯人処罰への正義感が強い人が圧倒的に多く、冤罪を防ごうという方向で意識が高い人は少ないだろうというのが私の個人的感想である。現役世代で定職に就いている方の多くは辞退しているのではないだろうか。

 

 そんなわけで、広く一般市民の感覚を刑事裁判に取り入れようという裁判員制度を導入したそもそもの狙いがないがしろになっているのが現状だと思う。せめて、国政選挙の投票率ぐらいまで出席率をあげてほしいものである。裁判員の出席率をあげるためには、裁判員の日当を上げるのが手っ取り早いと思うのだが、いかがだろうか。現在は1日1万円のようであるが、せめて1日3万円にしたら出席率は間違いなく上がると思うのだが…。予算が心配という方もいらっしゃるだろうが、裁判員裁判対象事件の事件数から見て、全国でせいぜい十数億程度の予算規模であり、航空自衛隊の戦闘機1機の値段でお釣りがくる。

 

 マスコミも高校生が裁判員になると騒ぐより、裁判員の出席率をあげるように国に働きかけてほしいものである。

 

 今年1年ありがとうございました。来年もよろしくお願い致します。年始は1月4日からの営業予定です。

 

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